鯨を飲む

くうねるところ のむところ

ひかり、におい

親友に誘われ、街へ繰り出す休日。

相変わらず当直明けの友人と一緒に映画「おっさんずラブ」を見に行く。とても面白かった!驚いたのは、いくら連休初日とはいえ広いシアター内がほぼ満席だったこと。そして客層が本当に幅広かったこと。10~20代の女性のみならず、ひとりで見に来ているおじさんやおばさん、仲睦まじい老夫婦まで。

「令和だね」

顔を見合わせながらそんなことを言って、私たちは椅子に座る。私はジンジャーエール、彼女はやっぱりコーラ。ドタバタでコメディチックで、大切なことはひたむきな姿勢で伝えようとしてくれるこの作品は、銀幕でもギアが入りっぱなしだ。コミカルなシーンでは、シアター内のほとんど全員が一斉に肩を揺らしながら笑っている。

私は映画館で映画を観ることがとてもすきで、それは音がいいからだとか 画面がおおきいからだとか 様々な理由があってのことだけれど。最たる理由として本来交わることのない他人たちと 同じものを見て 似たものを感じることができるから というのがある。

私にとってのよい映画館とは、観客が遠慮せず ただ感じるままに声をあげて笑えるような場所だ。だからそういう意味でも 今日の映画は100点満点。よい映画を見ました。

f:id:kurolabeloishii:20190921214523j:image

夕食前に偶然、香水ガチャを発見。SNSで話題になっているのを見て以来、ずっと気になっていた。ちょうど映画が始まる前に「自分のすきな香りを持っているってもしかしたらかっこいいことなのかも」と彼女が言っていたこともあって、ふたりして店内へ。1回500円で香りをひとつ。3ブランドからすきなものを選んであとは運のまま 回すだけ。

ひとつめはABEL。ワイン醸造家の女性が設立したものというところに惹かれて選んでみる。「pink irls」と書かれたちいさな入れ物に入った香りは 華やかで 軽やかで 爽やかなもの。少女と女性のちょうど真ん中みたい。

『王道フローラルの新たな舞台。鼻をくすぐりノドではじける花椒とバジルで幕開け。アイリス、ローズ、ジャスミンが華々しく踊り、ナチュラルムスクがそっと幕を下ろす。』

公式の説明文もとっても素敵。何よりアイリスは私のすきな花のうちのひとつ。

結局私たちはあまりにうれしくて、お酒を1杯引っ掛けたあと(私はメルロー、彼女はコークハイ)、再びお店を訪れて、さらにもう1度ずつ回してみる。今度はここの店舗では唯一、箱つきのもの。

f:id:kurolabeloishii:20190921214647j:image

ETAT LIBRE D′ ORANGEの「ゴミの花」

『天上の雲間から降り注ぐ光。ゴミ山の頂上に屹立する一輪の花。その花は気高く神々しい。リユースでもリサイクルでもない、アップサイクルという手法で香料の残滓から生まれた革新的な香りは滅びゆく地球への一つの奉仕。』

ひと嗅して驚いて、名前を聴いて、また驚く。

私の第一声は「飲みたい。おいしそう」だった。それくらいにフレッシュで フルーティーで まろやかで 甘い。店員さんによるとりんごジュースの残り粕なんかも含まれているんだそう。なるほど 通りでいい香りがする。何よりも、この佇まいがかっこいい。気高いのに、尖っていなくて ちっともぶっきらぼうじゃあない。

ここのブランドは一風変わっていて 挑戦的で 自由そのものみたい。

『香水の常識を逸脱し、禁止されたものを乗り越える。

規則を破るため、反抗するため、ただ存在するために作られた香水。』

そう、店員さんが教えてくださった。私はその在り方だとか 見ている方向だとか 心意気だとか とにかくそういったものに強く、惹かれた。ただ存在するための香り。それはとても私にとってしっくり馴染むものだ。使い切ったらまた買い直そう。それくらい、本当に だいすきな香り。秋というよりは しんと鋭い寒さの中で香っていたい。真冬に飲む 甘いホットワインみたいな存在。

お得ね、1日でふたつも すきな香りを手に入れちゃった。 すっかり香りの虜になった彼女と一緒に笑い合いながら、夜を歩く。歩道橋に繋がる暗い階段の途中で、同じお店のショッパーを揺らしながらお互いの手首に鼻を寄せて 「いいにおい!」とはしゃぐ。

ああ本当にいい夜だ。

 

f:id:kurolabeloishii:20190922100441j:image

昼にはちょうど2食だけ残っていたたんぽぽオムライスを食べた。食べながら「そういえば昔、制服の靴下がすぐ破れていたんだけど なんでだろう?」と彼女が言うので 思わず笑ってしまった。

それはね、 きみがいつも走ってばかりいたからだよ。部活の先生から何度も所作を注意されていた頃の彼女を思い出す。今でも よく走ってしょっちゅうアクセサリーを欠けさせたりなくしたりするところは 変わらない。

 

今日は無駄のない、洗練されたデザインのワンピースも手に入れたので そりゃあもう俄然無敵。このワンピースを来て たくさん出かけよう。本当にとても 素敵だから。