鯨を飲む

くうねるところ のむところ

レモンスカッシュは甘くない

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ヒールを脱いで素足になる瞬間がすきだ。だからと言って、ヒールをあいせるかというと また別の問題だけれど。

適当に入った喫茶店で割高のレモンスカッシュを頼む。埃を被ったレジに、くすんだ硝子。店内にはくたびれたサラリーマン風の男たちが、珈琲を傍らにノートパソコンを開いている。運ばれてきたレモンスカッシュはたっぷり汗をかいている。大きく輪切りにされたレモンはストローをさすと沈んでゆこうとするも、引っかかって蓋みたいになってしまっていた。飲み物に対してなにかを加える習慣がなさすぎて、シロップを入れずに飲んだら「え!」となるほどに酸っぱくて、思わず喉がぎゅっと締まる。口に含んだ感じも鋭い。慌てて注いだシロップを見て、レモンスカッシュは甘かったのだと知った。名前にばかり騙されて、甘い飲み物ではないと認識していた。どうやら考えを改める必要があるらしい。半分ほど減ってからようやくそれらしい味になる。機嫌よく飲みながら、東京03のコントを見ていたら容易く噎せた。平日昼すぎの雑多な喫茶店でよかった。無関心さが支配している。多分誰も私の挙動の不審さに気づいていない。というかそうでないと困る。

 

外は夏らしく暑い。じっとりと重くて敵わない。今年の夏をどう過ごすか悩んでいる。去年買ったハンディファンは今年も優秀で、けれどあまり出番はない。もうすこし出番が増えればいいんだけどな、と思いながら机に向かっていた。