鯨を飲む

くうねるところ のむところ

白い街、ちらちらとした雪

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軽い朝食を済ませ、いつもの様に結露を拭こうと窓に寄ると凍りついていた。指で触れば冷たく、思った以上に頑丈で削れそうにもない。サッシの辺りには薄い氷がぱらぱらと散らばっており、硝子のようにも飴細工のようにも見えた。元旦に食べたいちご飴のことをぼんやりと思い出す。一本を家族と分け合って食べた。うまれて初めて食べるそれは、思いのほかおいしかった。熱湯でもかけようかと一瞬考え込んでから、結局やめにする。どうせストーブをつけるのだ。そのうち勝手に溶けるだろう。

12時になるよりも前に朝食のような昼食を済ませる。窓を見るととっくに氷は溶けていた。溜まった水を拭き取ってから、加湿器をつけてPCに向き直る。暫くして、窓を見ると雪が降っていた。おやと思いベランダへ出ると強風に煽られた雪が舞っている。あちらこちらの屋根がうっすらと白くなっていて、いつもより彩度の低い街が妙に懐かしかった。かと言って、ノスタルジーに浸るほどの余裕も忍耐もなく、冷たい風がおっかなくてすぐに部屋へと引っ込んだ。GUで買ったグレーのパーカーのポケットに手を突っ込んでから、赤々としたストーブの前で暖をとっている。締め切りは近い。デスクに無造作に貼られたいくつもの付箋たちを眺めながら、はやく取っぱらいたいなということを考えていた。