鯨を飲む

くうねるところ のむところ

レモンチェッロと破れた背表紙

f:id:kurolabeloishii:20190706215527j:image

このところ、どうにも具合が良くないのでどうにかしようと試みた結果 ふと枕元を整理してみた。せっかくだからと、一等大切にしてきたものを並べてみる。金木犀の香りの香水、甘いバニラのボディクリーム、人生で初めて買ったフランスのトワレ、300円のガチャガチャで出たうさこ。そして、本。

 

いざ並べてみると、大半が本だったこともそうだけれど、古本みたいにボロボロになったものがそこそこあることに気づいた。酷くボロボロになってしまったものたちはどれも10年前に買ったものだ。当時の私は与えられたひと月のお小遣いの大半を本に費やしていて、学校帰りに本屋へ行くことがすきだった。当時の私は一度の来店で買う本は二冊までと決めていた。未だにパン屋で買うパンはふたつまでと決めているのと同じように。そのおかげか、ここにある本のすべてをどこで買ったものなのか覚えている。私の住む街は静かだし、穏やかだし、交通の便もいいし、こと暮らすという点において見本のような場所なのだけれど、唯一且つ致命的な欠点として本屋がないというのがある。だからわたしは本を買うために自転車を走らせたし、下校時には分厚い教材と教材の間になんとか買った小説を詰めようとしたりした。そんなことをしているのだから、そりゃあこんなにボロボロにもなるわけだ。

誕生日に買って、まだ残してあるレモンチェッロに氷を足したのを飲みながら所々破れた背表紙を眺める。私をゆるやかに構築したものたち。随分と遠くまできてしまったね。

 

f:id:kurolabeloishii:20190706221402j:image

 

夏。近々財布を新調しようと考えている。

どうせならとびきり気に入ったものにしようと意気込みつつ、素敵な財布に出逢えたら嬉しい。そしてあわよくばその中がお金でいっぱいになってくれるともっと嬉しい。