鯨を飲む

くうねるところ のむところ

本を読んでいる

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「あなたの作品に思い起こさせられる小説がある」と言って一冊の本を薦められた。ので読むことにした。驚いたのはこの本に出てくる台詞が一言一句、私の思うことと同じだったことだった。

 

「トラウマという言葉を笠に着て、僕は誰よりも傷ついてるんですと主張するだけ。人間なら誰だって塞ぎきれない傷の一つや二つ負ってるもんなのに、殊更にそれを主張するのは『俺って呼吸してるんだぜ』と自慢するようなもの。そう思わない?」

 

それは私がトラウマという言葉を嫌う理由であり、そもそも私はこの言葉を知っていた。どこで知ったのか、そもそも何故知っていたのかはわからない。多分どこかで見聞きしたのだと思う。それも10年前くらいの話だ。そんな言葉と再び出逢うとは思ってもみなかった。

読みながら、気づくとベッドの布団にしみができていた。涙が冷たくて頬が乾燥して、とうとう読み終えてページを閉じるまで涙は止まらなかった。ベッドに突っ伏して泣きじゃくってしまった。

世界がとても残酷で、世界がとてもやさしくないということを、酷くやさしく描いたのがこの本だ。なのに絶望だけを遺してはいかない。この本は、そういった意味でとても狡かった。

 

生きることはつらいこと。その事実をずっと私は認めたくなかったのだと思う。そんなことはないと、命は輝かしくて、世界はうつくしくて、価値あるものなのだと信じていたくて必死だったのだと思う。そうではないと思ったら、もう二度と立ち上がれそうになかったから。だからずっと抗い続けていた。認めてしまうことが怖かった。今度こそ生きていけそうになかったから。

だけど、思う。それでも私は生きていかなければならないのだ。私も、誰も彼もが。痛みを伴う穴を携えながらそれでも歯を食いしばって前を向かなければならないのだ。本当に酷い話で、つらいことだけれど、それでも。

この本と私に少しでも重なる部分があるのなら、私は生きていく。それが可能なはずだ。私の意思と、必要なものやことを怠らなければ。

 

 

ぐんぐん夏になってゆくね。

近々髪を切ろうと思う。何事もまず形から入るような人間だからいっそバッサリといきたいところだけど、さてどうなるだろう。