鯨を飲む

くうねるところ のむところ

秋晴れとおやつ

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一年前は立ち入りもしなかった場所にも難なく踏み込めるようになってきた。私が普段いる建物よりもかなり古くて埃っぽくて、だけど上の階へゆくほどひとの気配が薄れてゆくところは妙に似ている。建物が変わっただけでそこにいる人間のカラーというか 気配もすこし変わるのが面白い。そもそもここは芸術畑の人間の巣窟でもあるのだから当然と言えばそう。ここでの私はやはりどこか心許なくて アウェーな感じがしているけれど、それも含めてなかなかすきだったりもする。

今日の空はかぎりなく雲が少なくて、石造りの建物の間をすうと青空が伸びているのを見上げていた。よく飛行機が飛ぶ日だった。すっきりと気持ちのよい、よく晴れた秋の昼下がりを私は本当にあいしている。黒いマーチンの重さにももう慣れて、肌寒いこともあるからと丈の長い羽織りをてろてろと靡かせながら ぐんぐん歩いてゆく。ワンピースにもなるラベンダーカラーの優等生。

そういえば今朝から香水を金木犀のものに変えた。毎年涼しい風が吹き始めると行う、ささやかな儀式のようなもの。朝にはすっきりと硬かった香りが、昼にはやわらかな甘さを放っていた。これからの季節の私の肌に再びこの香りが馴染んでいくのだと思うと嬉しくなる。

 

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今日は長い1日になるのでちいさな保冷剤と一緒におやつを持ってきていた。お土産の鈴屋のデラックスケーキ。レトロな包みといい、しっとりとした甘さといい、特別という感じがしてだいすきな銘菓だ。いつもは珈琲を淹れるけど今日は気持ちのよいテラス席で、パックの豆乳紅茶と一緒に。

ぐんぐん慌ただしくなるんだろうけれど、これからも1日の楽しみを自分で用意してやれるといい。そんな風に過ごしたいと改めて思った日だった。

明日の楽しみは途中で止まったままの有栖川有栖の短編集を読むこと。