鯨を飲む

くうねるところ のむところ

魔女の一撃

とうとう私も魔女の一撃を喰らってしまった。日本ではこれを「ぎっくり腰」と呼ぶらしい。そう、ぎっくり腰。遂にそういうフェーズが来てしまったのか……という落ち込みのような面白みのような感情を抱いている。ぎっくり腰に年齢に年齢はあまり関係ないことは知っていたとしても、なんとなく「遂に……」という気持ちになってしまう。

労働を終え、さあ帰宅するぞと事務所を踏み出した瞬間、そいつはやってきた。私を仕留めるにはその一撃だけで充分だった。息が詰まるような痛さ。歩くことは出来る。ただ、身体を捻ったり折り畳んではいけないということを直感していた。本能なのだと思う。慎重に慎重に、息を殺しながら帰宅した。ダメだ、腰をやってしまったかもしれない。最初にそう思ったとき、よりによって腰を……。というショックがまずあり、同じくらい先行きの不安を感じた。あと凄く痛いということも。

私はぎっくり腰が何なのかさえあやふやだったのでまずは調べてみることにした。敵を知らねば討つことは出来ぬ。ぎっくり腰はそもそも温めてはいけないらしい。湯船に浸かるなんて言語道断。炎症を抑えるために冷湿布や氷嚢で冷やすのだという。素直に従い、ベッドに寝転ぶ。ぎっくり腰。私とはまだ無縁だなんて勝手に思い込んでいた。まさかこんなに身近にあるものだったなんて。というか本当にこれはぎっくり腰なのだろうか?悪あがきのように考える。ふと、膝にじんわりとまとわりつく様な鈍い痛み(ほぼ痺れのようだと言ってもいい)があることに気づいた。わはは。腰が悪いときの痛みじゃん。やっぱりこれ、ぎっくり腰だと思います。痛いし笑いごとではないのにちょっと面白くて、いっそ愉快ですらあった。全然かなり痛いんですけれども。

家族たちに話すと彼らは腰痛のプロらしく(そういえば妹はヘルニア持ち)、テーブルの上に寝転がって腰を伸ばす(脚は降ろす)のがいいだとか色々と教えてくれた。そして私の腰の容態が比較的軽い部類であるように思われることも。とりあえず当分は腰を捻ったり負担をかけすぎたりせずに、日常通りの生活を送っていこうと思う。今回のことでストレッチ不足を痛感してしまったので、走ったり身体を動かしたり、座って作業をした際には必ずストレッチを取り入れよう と固く誓っている。