鯨を飲む

くうねるところ のむところ

あたらしいメガネとムスクのかおり

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ブームがわかりやすい本棚の中身。

暮らしには工夫が必要なのだと嘯きながら街に出た。灰色の空は鈍くて、自己主張の激しい雨音とタイヤが水溜まりを跳ねる音ばかりが聞こえている。久々に電車に揺られながら、もしかするとやや薄着だったかもしれないと不安に思った。七分袖ではあるものの心許ない感じの生地だった。頼んでいたブルーライトカットの眼鏡が仕上がったのでまずはそれを迎えに行く。新しい眼鏡は形がよい。俯いてもブレない視界に感動した。これで頭痛ともおさらばできたればもう最高。ショッピングモールはそれなりに賑わっているように思えた。至って自然に、平日の昼下がりといった様だった。

喉が乾いたのですこし迷ってからレモネードを買った。正確には日向夏ソーダで、やんわりとなだらかな酸味が気持ちいい。ずずずと吸っていれば1分くらいでなくなった。吸っても限りなく無味に近い氷の溶けたあとしか現れない。おいしくて、さらにはお洒落な飲みもの。なぜそんなにもすぐ無くなってしまうのか。おったまげてしまう。

帰りに美容液が欲しくてフロアを探索したけれど、どうも求めているものが見当たらない。致し方なしとそのまま帰ろうとして、何の気なしに他の店に吸い込まれていた。様々なパックやクレンジングやなんだかよく分からないものまで並ぶ店内で、ハンドクリームが並べられているのを見た。そういえば香水を使うようになってからはすっかり使う機会がなくなってしまっていた。クレヨンで色を塗ったようなデザインの中からムスクのかおりのものを手に取ってみる。思っていたよりもずっと肌馴染みのよいにおいがした。すきだなあと思って、すこしの間悩んで、それからやっぱりレジへと向かった。暮らしには工夫が必要だし、きっと手からすきなにおいがすれば気持ちがうれしくなるはずだし。

 

調子がなかなか戻らなくて、かと言って急激に悪くなっているわけでもなくて。底に足が着きそうでつかないような場所でバタ足をしているような心地でいる。何より、調子がよくないときに「本当に私は今、調子がよくないのか?」と怪しんでしまう。どうしようもない。それでも沈まないようにいたいから、やっぱり力を抜かなくちゃと思う。自分の扱い方を間違えることのないようにしないといけない。この頭はすぐに色々なことを猛スピードで考えはじめるので、しばらくは本を与え続けようと思う。よそ見をしては危ないからね。