鯨を飲む

くうねるところ のむところ

読んだ本について

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レベッカ・ブラウン(柴田元幸訳)の『体の贈り物』を読み終えた。

洗練された文章で、淡々と、けれど滲みるようにそれは描かれていた。末期のエイズ患者と、彼らを支援するホームケア・ワーカーの物語とだけ書いてしまうと、酷く陰鬱としたもののように思えるけれど、これはただ悲しいだけの、喪失があるだけのものではない。何かを与えられるだけの人間はいないということ、私たちはいかなるときも、互いに、何かをもたらし、贈りあっているのだということ。絶望があり、希望がある。それらが折り重なってゆく。病気は人々を脅かし、完膚なきまでに喰らい尽くす。現場には、例えどれだけ手を尽くそうが、結局のところ最後にあるのは避けようのない「死」だけであるということ。どれだけ優しくし、どれだけ想い、支えても、彼らが元気になって飛び立つことはない。絶望的で、かなしみしかないはずなのに、死にゆく人間はそれらだけを残してはいかない。いつだって。

手放し難い一冊になった。私はきっと、この本を生涯大切にする。

体の贈り物 (新潮文庫)

体の贈り物 (新潮文庫)

 

 

中学からの友人と会い、催事展で自分用にチョコを買ったり、なみなみと注がれた日本酒を舐めたり、院生の知人と肉を食べに行ったり。そういう風にして過ごしている。今日からまた、しばらく頑張る日なのだけれど、まあなんとかなるでしょう。ようやく、流れに身を任せてみようかと思い始めている。上手くできるかはわからないけれど、とりあえずやるだけやってみる。頑張った日は、当分の間うつくしいチョコレートがあるから、それらを一日ひと粒ずつなら食べていいことにしているので、楽しみだ。