鯨を飲む

くうねるところ のむところ

歯を抜き終えたので

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親知らずを抜いて2日が経とうとしている。寝て起きるたびに少しずつ腫れが引いていて、睡眠こそが最大の薬であるということをひしひしと感じている。下を向くと痛みがあるから、まだあまりなにかを読んだり書いたりすることが辛い。ときどき思い出したように頭痛にも悩まされている。紙のにおいや、指先に触れるページの感触や、なにより物質としての本がすきなので、日頃はほとんどを紙媒体で嗜んでいるけれど、こういうときに電子書籍はありがたい。身軽だし、便利だし。それでもやっぱり私は紙の本のことを一等、あいしている。適材適所。どちらともゆるやかに共存していきたい。

 

我が家のひとびとは食器類への関心が薄くて、私はいつも淋しい気持ちでひとりコツコツと器を集めたりしているのだけれど。我が家にはいくつかのよくわからない器たちがいる。シチューをよそった器もそうで、これは昔ホームステイにきたオーストラリアの女の子がくれたもの。インターネットに載せたところ、仲良くしている女の子が犬だと勘違いしてしまったらしかった。勘違いしながらもかわいいと褒めてくれるのが可笑しくもかわいくて、笑えた。カンガルーやコアラのシュールな器たちは、身体の弱っているときに使うとなんだか笑えてきてよい。ふざけた食器類をいくつか持っているというのは、私なりのライフハックなのかもしれないなと思ったりもした。例えばお寿司の柄が一面に描かれた湯のみもそう。

 

最後の一本だった親知らずは下の歯で、意地の悪いことに横向きに生えていた。上手に抜いてもらったけれど、(正確には切って、抜いて、そして縫って)唇のはしは切れてしまっていた。じんじんとした痛みは今なお続いていて、なによりも不便さを感じているけれど、今抜いておいてよかったなとしみじみと思う。この痛みを抱えたまま働いたりするのは、私にはちょっと、かなり御免だ。せっかく今の今まで虫歯ができたこともないのだから、虫歯のリスクも増やしたくはなかったことだし。

腫れが引いて抜糸も終えたらまずはハンバーガーを食べると決めている。おおきな口を惜しみなく開けて、がぶりがぶりと食べものに食らいつくのはさぞかし気分がいいだろう。トマトとチーズのはいったやつが理想的。ハイネケンも呑みたい。ハンバーガーはビールと一緒に食べるものだと思っている。一刻もはやくその日を迎えるために、今は野菜ジュースを飲みながら凌いでいきたい。