鯨を飲む

くうねるところ のむところ

風の強い日と花

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昨日も風が強い日だった。干したままの洗濯物が何度も窓をべっしんべっしんと叩いている。タスクを終えた夕方、走るような気分ではなかったから散歩にでかける。気に入りの音楽を聴きながら住宅の間を縫うように歩いては、川べりや小学校の裏へも進んでゆく。家の中で聴く音楽よりも外で聴く音楽の方がずっとすきだ。けれどもあやうく無防備なこの行為を、容易くできてしまえる自分に時々呆然としてしまいそうになる。桜はすべて散り終えていて、けれど道すがらで足元にさまざまな花々を見かけた。空には雲がすくなくて、夕方特有の陽射しがやわらかに光る感じが気持ちいい。  

夜に妹が、知り合いのエアロビクスの先生が、家でできる運動メニューをインスタグラムに載せているのだと教えてくれた。明日と言わず、ではさっそくやってみましょうと思い立ち、私はせっせとエアロビを始める。これが楽しいけれど難しくて、とにかく大変。もはや一種の才能だとも言えるほどに私はリズム感がからっきしで、特にダンスは悲惨だ。高校時代はダンスの授業では毎回泣きを見たし、ソーラン節くらいしかろくに踊れそうにない。一生懸命にやればやるほど母は涙がでるほど笑い出す。それに対して「ウケているならまあいいや!」と満更でもない自分の調子の良さには さすがに少し呆れた。それくらいの気楽さを備えている自分のことは、内心いとしくもあるのだけれど。でもまあえらい人なんかが笑うと免疫力が上がるって言っているわけだし。

 

水を飲み、眠る前に本を読む。瀬尾まいこ先生の「卵の緒」。私がもっとも愛する本。初めて読んだのは小学生の頃だった。私はその作品を受験勉強の過去問で知った。そのためタイトルも作者もわからずにいて、けれどたった僅かに抜粋されただけの箇所のことを忘れられずにいた。今みたいにインターネットが生活の要だったわけでもなかったから、おさない私には本を調べる術がなかった。中学生になり、ある日本屋で本を手にした。その本は 本当にたまたま、まさに私が探し求めていたものだった。そういう思い出も相まって、この本はいつだって私をいとしくさせる。今夜もまた、いとしくて堪らない。もうずっと、この本のページを捲ってきた。ふと今の私の暮らしや、私自身のことを振り返る。私は今の自分のことが一番すきだな、と思った。私はなにも持ち合わせていないけれど、そのことが案外心地よくて 安心してしまえたりもするんだ。

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桜じゃなかった。なんの木なのかはよくわからない。
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